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第1回:PPP・PFIとは何か-公民連携の基礎解説と活用メリット

2025/11/01

1.     官民連携が求められる背景

近年、日本の自治体は財政制約や人口減少、既存施設の老朽化といった課題に直面しており、国土交通省は地域経済の活性化に向けて行政と民間の連携を推進しています。その為、行政と民間が連携して公共サービスや社会インフラを提供する動きが加速しており、このような官民の協力関係はPPP(Public-Private Partnership)と呼ばれています。PPPは、公共の目的のために、行政と民間がパートナーシップを組んで公共施設の建設・維持管理・運営といった公共事業を協力して行う枠組みで、財政資金の効率的な活用とサービス品質の向上を目指すものです。

従来は行政が主体となっていた公共施設の整備や運営も、民間の資金・ノウハウを活用することで多様化するニーズに応えられるようになっており、官民連携の重要性が高まっています。

2.     PPPの代表的な手法について

PPPは官民が協力して公共サービスを提供する広義の概念であり、代表的なものとして、業務委託、指定管理者制度、包括的民間委託(DB・DBO)、PFI方式などの手法が含まれます。

また、PPPは、下図が示すように、公共事業と民間事業の中間に位置し、公共が100%担う事業と、完全な民間サービスの間に存在する“連携領域”となります。

前述したPPPの代表的な手法については下表のとおりです。

表1|PPPの代表的な手法と特徴

名称特徴
業務委託特定の業務を民間に委託する最もシンプルな形態。自治体職員による直営と比較して、人件費の抑制や業務効率化が可能。
指定管理者制度地方自治体が設置した公の施設(文化施設、公園、体育館など)について、民間やNPOなどを指定して管理運営を委ねる制度。民間の創意工夫によりサービス向上を図ることができる。
包括的民間委託(DB・DBO)公共施設の設計(Design)・建設(Build)・運営(Operate)などを一括で民間に委託する方式。行政の負担軽減と一貫性あるサービス提供が期待できる。
PFI方式  PPPの中でも特に民間が資金調達から設計・建設・維持管理・運営までを一体的に担う仕組みであり、行政はそのサービスに対価を支払うことで公共サービスを維持・提供する。 PFIにはさらにBTO(Build Transfer Operate)、BOT(Build Operate Transfer)、コンセッション方式など複数の類型が存在する。

3.     PPPとPFIの違い

PFI(Private Finance Initiative)はPPPの手法の一形態で、民間が資金調達から設計・建設・維持管理・運営までを一括して担い、行政はサービス対価として支払いを行う仕組みです。

この方式は、財政負担を平準化しつつ効率的に公共サービスを提供するために考案され、1992年に英国で導入されました。日本では1999年のPFI法制定により本格的な活用が始まっています。PPPは枠組み、PFIはその一形態であり、PFIは民間活用度の高い方式として位置付けられます。

  • PFI方式の種類 – 所有権と資金調達の違い

内閣府の手引きでは、PFIの主な事業方式として次の類型が挙げられています。

  • BTO方式:民間が施設を建設し、完成後に所有権を行政へ移転した上で民間が維持管理・運営を行う方式。公共側の資産管理が早期に可能となり、民間は運営を通じて投資を回収します。
  • BOT方式:民間が施設を建設・運営し、事業終了後に所有権を行政へ移転する方式。民間は一定期間の運営を通じて収益を得ます。
  • コンセッション方式:施設の所有権は行政に残したまま運営権のみを民間に設定する方式。有料道路や空港などで採用され、利用料収入をもとに投資を回収します。

これらは施設所有者とリスク分担の形が異なるため、PFI導入可能性調査の中で事業特性に応じて選定されます。さらにPFIには、自治体が民間事業者へサービス対価を支払う「サービス購入型」と、利用者の料金によって運営する「独立採算型」、両者を組み合わせる「ミックス型」があり、費用負担の方法によっても分類されます。

5.     PPP/PFIの活用メリット – 公共と民間双方の利点

PPPやPFIを活用することで、公共と民間の双方にとって以下のようなメリットが期待されます。

公共側のメリット

  • 財政負担の平準化:PFIでは民間が資金調達を行うため、自治体は初期投資を抑え、長期にわたって支払いを平準化できます。これは人口減少社会で税収が先細る自治体にとって大きな利点です。
  • サービスの質向上:性能発注や一括発注によって民間の創意工夫や技術力を活かし、安価で質の高い公共サービスが提供できるに加え、競争的な提案を取り入れることで効率化が進みます。
  • 行政の役割とリスクの明確化:設計・建設・維持管理・運営を民間に委ねることで、行政は政策立案やサービス水準の監督に専念できます。また、事業の各フェーズにおけるリスクを民間と分担することで、行政側のリスクを限定かつ明確化することが可能になります。
  • 地域活性化: PPP/PFIにより良質な公共サービスの提供やコスト削減、地域活性化が期待できます。
  • 住民ニーズへの対応力向上:柔軟な運営や改善が可能となり、多様化する住民のニーズに応えやすくなります。

民間側のメリット

  • 事業機会の創出:これまで行政が担っていた分野・領域に参入でき、新しい市場を開拓できます。また、官民連携事業は長期で規模も大きいため、安定した事業基盤となります。
  • 長期安定収益の確保: PFIは長期契約が多く、民間事業者は安定した収入を見込むことができます。PFIの基本原則であるVFM(ヴァリュー・フォー・マネー)という一定の支払いで最も価値の高いサービスを提供するという考え方を満たすことで、効率的な運営が収益につながります。
  • 企業イメージの向上:公共性の高い事業に参加することで社会貢献が評価され、行政や地域との信頼関係が築かれます。これは企業のブランド価値向上にもつながります。

6.     PPP/PFIの課題と留意点

PPP/PFIの課題として、行政が民間の業務を適切に監視しなければサービス品質が低下するおそれがある点や、性能発注方式に伴う審査・手続きの負担が挙げられます。また、性能発注方式は提案書の評価や審査に時間と労力がかかり、従来の公共事業より手続きが複雑になる点も課題となります。

民間側にとっても長期的な資金調達やリスク管理が求められ、事前準備やモニタリングにコストがかる点が課題として挙げられます。

その為、VFMの観点から、単に最も安価な提案を選ぶのではなく、公共サービスの質や長期的な価値を評価することが重要です。

7.     まとめ

PPPは行政と民間が連携して公共サービスを提供する幅広い概念であり、その中でもPFIは民間の資金とノウハウを活用する手法です。

国土交通省や内閣府は、PPP/PFIを活用することで財政負担の平準化、サービスの質向上、地域活性化、新たな民間ビジネス創出といったメリットが期待できると評価している一方で、行政のモニタリングや適切なリスク分担が不可欠であることなど活用における課題についても強調されています。

それでも、政府はPPP/PFI推進アクションプランに基づき導入拡大を進めており、単に業務を委託・受託するだけでなく、官民が協力して公共課題を解決し、地域に持続可能な価値を創出する仕組みとして期待されています。また、PPP・PFIには様々な手法が存在するので、各自治体や民間企業は地域の実情や事業特性を考慮し、双方のメリットを享受できる最適な官民連携スキームを検討することが重要です。次回は「なぜ今PPP・PFIが注目されているのか?」というテーマで、社会的背景や政策動向について詳しく解説していきます。

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