第2回:なぜ今PPP・PFIが注目されているのか
2025/11/07

1. 日本におけるPPP・PFIの法制度と発展
PPP(パブリック・プライベート・パートナーシップ)は、行政と民間が公共施設の建設や維持管理、運営などを連携して行い、民間の創意工夫を取り入れて財政資金の効率化やサービス向上を図る仕組みです。
代表的な制度であるPFI(プライベート・ファイナンス・イニシアティブ)は、民間資金で公共施設の設計・建設・運営を行い、長期契約によってサービスを提供します。
日本では、1999年に「民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律」(いわゆるPFI法)が制定され、民間資金を活用した公共施設整備が法的に認められました。これを契機に、PFIによる事業が徐々に全国に広がり始めました。
また、2001年の地方自治法改正では公の施設の管理を民間に委ねる指定管理者制度が導入され、官民連携の裾野が広がりました。
さらに2011年の改正では、行政が所有権を保持したまま空港や水道などの運営権を民間に委ねる「コンセッション方式」が制度化され、インフラの更新・再構築を民間の力で行う流れが加速し、空港や上下水道事業での活用も注目を集めています。
表1|日本におけるPPP・PFIの法制度等について
| 時期 | 概要 | 内容 |
| 1999年 | PFI法の成立 | 「民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律」(通称:PFI法)が成立。これにより、PFI方式による公共施設整備が法的に認められ、日本国内で官民連携によるインフラ整備の第一歩が始まった。 |
| 2001年 | 指定管理者制度の導入 | 地方自治法の一部改正により、「指定管理者制度」が導入され、地方公共団体が設置する公の施設(公民館、体育館、図書館など)の管理運営を民間事業者やNPO法人等に委託できる仕組みが整う。 |
| 2011年 | PFI法の改正とコンセッション導入 | 東日本大震災を契機にインフラの老朽化対策が重要視され、PFI法が改正。これにより、インフラ資産の「運営権」を民間に付与する「コンセッション方式」が制度化され、空港・水道事業などの活用が広がった。所有権を行政に残したまま運営を民間に担わせることで、効率化と持続可能性の両立が図られた。 |
2. 近年のアクションプランと政策動向
2020年代に入ると、国の「PPP/PFI推進アクションプラン」が毎年更新され、官民連携の規模拡大と多様化が図られています。例えば、令和7年版では地方公共団体への支援強化、民間事業者のノウハウを発揮できる環境整備、地域課題解決のためのスモールコンセッションの推進、フェーズフリーの推進などが盛り込まれました。内閣府は専門家派遣制度や地域プラットフォーム協定制度を通じて自治体の案件形成を支援しており、PPP/PFIが特例的な手法から政策の柱へと定着しています。
このように、法的な整備と政策の継続性が、PPP・PFIの普及を支える重要な土台となっています。
3. 変化する社会課題と限界を迎えた行政運営変化する社会課題と官民連携への期待
日本社会は人口減少や公共施設の老朽化、行政運営の硬直化といった課題に直面しています。
具体的に、公共インフラの多くは高度経済成長期に整備され、今や老朽化が進んでおり、これらを維持・更新するには多額の費用が必要になります。
国土交通省は、こうした状況に対応しながら地域経済の活性化を図ることが喫緊の課題だと指摘していますが、限られた人員と予算でインフラを維持・更新するには自治体単独では限界があるため、民間資金や技術・ノウハウを活用するPPP/PFIが有効な手段として注目されています。
また、内閣府の支援事業では、専門家派遣や地域プラットフォーム形成支援、優先的検討規程の策定支援などが用意されており、こうした制度整備により、自治体はより積極的に民間との連携を検討できる環境が整っています。
4. 公共の担い手の多様化とスモールコンセッション
近年、行政単独では解決が難しい複雑な課題に対し、市民、企業、NPO、大学など、多様なステークホルダーが協働して地域を支えるという考え方が一般化しつつあります。
例えば、国土交通省が推進するスモールコンセッションはその象徴的な取り組みで、廃校や古民家などの空き施設を活用し、民間の創意工夫を最大限に生かした小規模な官民連携によって地域課題の解決やエリア価値の向上を目指しています。事業規模は原則10億円未満とされ、身近な遊休不動産の活用が特徴です。
このスモールコンセッションでは、自治体にとって維持管理コストの削減やエリア価値向上が、また、事業者には長期的な事業機会や地域貢献、住民には利便施設の増加や思い入れのある施設の継承など多くの効果が期待されています。
また、コンセッション方式に限らず、指定管理や管理委託、賃貸借など様々な官民連携手法を案件に応じて柔軟に組み合わせることが重要です。
PPPは、こうした時代の価値観にも合致する枠組みであり、「公共」を担う主体を拡張し、社会全体で公共性を再構築していくための有効な仕組みとなっています。
5. 第二の波としてのPPP・PFI
こうした背景のもと、PPP・PFIは制度として成熟期に入りつつありながら、今まさに「第二の波」を迎えています。
「第一の波」は、2000年代初頭から2010年代にかけてのPFI法制定と指定管理者制度の普及、さらに空港や水道分野へのコンセッション導入などを通じて、「公共インフラの整備・運営」に焦点を当てたものでした。この時期は、公共施設の老朽化対応や財政制約を背景に、民間資金を活用するという経済合理性が主たる目的でした。
これに対して現在の「第二の波」では、地域経営や地方創生の基盤として、より多面的で戦略的な意図を帯びており、具体的には、以下のような動きが加速しています。
- 価値共創型PPPの登場
官が目的を設定し、民が手段を提供する従来型から、官民が対等なパートナーとして課題・目的・手法を共に設計する「価値共創型PPP」のスキームの活用が増えています。
- 多様なスキームの組み合わせ
PFIだけでなく、包括委託やコンセッション、地方創生交付金など複数制度を柔軟に組み合わせたプロジェクト設計が主流になっています。
つまり「第二の波」では、PPP・PFIが制度として成熟して、従来のコスト効率や財政効果だけでは語れない、多元的な公共価値の創出が求められています。
このように、近年PPP・PFIは単なる「手法」ではなく、「まちの未来を共に考え、ともにつくるプロセス」としての活用が進んでいます。
PPP・PFIその本質が再評価されている今こそ、活用の幅を広げる絶好のタイミングと言えます。
6. まとめ
ここまで解説したように、PPP・PFIは、単なる手法ではなく、地域の未来を共に考えともに創るプロセスへと進化しています。
人口減少や老朽化インフラという課題に直面する中で、民間の資金やノウハウを活用した柔軟なスキームが求められ、小規模案件から広域プロジェクトまで官民連携の幅は拡大しています。
次回(第3回)は、BTO・BOT・DBO・コンセッション・包括委託・指定管理者制度など、PPP・PFIの具体的なスキームについてそれぞれの特徴を整理するとともに、どのような場面でどの方式が有効なのか解説します。