第3回:PPP・PFIのスキーム比較
2025/11/14

1. スキーム比較の意義
公共施設の整備・運営では、行政だけで対応しきれない課題や財源不足が顕在化しています。
PPP(パブリック・プライベート・パートナーシップ)とは、公民が協働で公共サービスを提供する枠組みで、PFI(プライベート・ファイナンス・イニシアティブ)や指定管理者制度、公設民営方式(DBO方式)など様々な手法が含まれます。
また、PPP/PFIのスキームは大きく二つに分類できます。既存施設の管理やサービス提供を中心とする「運営関連事業」と、施設の設計・建設から運営までを一体的に行う「整備・運営事業」です。
このように、PPP・PFIには様々なスキームがあり、事業の目的や条件に応じて複数のスキームを使い分けることが重要になってきています。
2. 運営関連事業のスキーム分類
そこで今回は、代表的なスキームを整理し、それぞれの構造や特性、活用場面を比較しながら解説していきます。
PPP・PFIのスキームは、運営関連事業では、主に既存の公共施設や行政サービスの運営を民間に委ねます。下表1では代表的なスキームについて、その特徴や用途例と併せて整理します。
表1|運営関連事業のスキームの整理
| スキーム | 概要 | 主な特徴 | 代表的な用途例 |
| 指定管理者制度 | 公園や体育館、文化施設などNPO既存の公共施設の管理運営を民間企業やNPOに委任する制度。 | 契約期間は比較的短く、自治体の資金や職員負担を軽減しつつサービス品質の向上が期待できる。 | 図書館、公園、コミュニティセンターなど |
| 包括的業務委託(Soft BPO) | 清掃や受付、窓口、点検、施設運営など複数業務をまとめて民間に委託する方式。 | 部分最適に陥りがちな業務を民間に包括的に委託することで、行政業務や管理の効率化やコスト縮減が図れる。 | ごみ収集業務、公共施設の維持管理・サービス提供など |
| 業務提案型委託(公募型プロポーザル) | 民間の創意工夫を取り入れるため、事業内容の提案と実施を一体で委託する方式。 | 柔軟な発想とノウハウを取り入れることで公共サービスの質を高め、地域活性化に寄与する。 | 地域活性・交流事業、まちづくり支援、観光事業など |
運営関連のスキームは、施設整備を伴わないためリスクが比較的低く、行政の責任範囲も限定的です。一方、委託期間が短い場合は長期的な改善投資が進みにくいという課題があります。その為、地域住民の利用実態を踏まえ、管理手法や委託範囲を柔軟に設計することが重要になります。
3. 整備・運営事業のスキーム分類
整備・運営事業は、施設の設計・建設から運営までを一体的に発注し、民間の資金やノウハウを最大限活用するスキームです。PFI法に基づくBTOやBOTに加え、DBOやコンセッションなど多様な方式が存在しますが、それぞれの特徴を比較します。(下表2参照)
表2|整備・運営事業のスキームの整理
| スキーム | 主な特徴 | 資金調達・所有権等 | 代表的な用途例 |
| DBO(Design Build Operate) | 行政が資金を調達して施設を所有し、民間が設計・建設・運営を一括で担う方式。公設民営とも呼ばれ、長期の運営ノウハウを生かしつつ、行政は資産として施設を保有します。 | 行政が負担し施設所有は行政。運営収入の原資は行政の指定管理費やサービス購入料。 | 焼却施設、上下水道施設、スポーツ・交流施設など、長期的な維持管理が必要な公共施設。 |
| BTO(Build Transfer Operate) | 民間が自ら資金調達を行い、施設を建設した後、所有権を公共に移転し、その後の維持管理・運営を民間が行います。 行政が施設を所有し続けることから公共資産として残しつつ、民間の効率的な運営を活用するバランス型の方式です。 | 建設費は民間が調達し、完成後に所有権は公共へ移転。行政はサービス購入料を支払い、利用者料金収入が得られる場合もある。 | 庁舎や病院、教育施設など、公共所有を維持したい施設。 |
| BOT(Build Operate Transfer) | 民間が資金調達を行い、施設を建設・所有し、事業期間中は維持管理・運営を行った後、契約終了時に施設を公共へ移転する方式。 | 建設費は民間が調達し、施設は民間が一定期間所有。 | 高速道路や橋梁、エネルギー施設など、大規模インフラで長期運営が可能な案件。 |
| BT+コンセッション方式 | 民間が建設した後に所有権を行政へ移転した上で、運営権はコンセッションとして長期で民間に付与する方式。 | 建設費は民間が調達し、完成後に所有権は公共へ移転。 | 空港、上下水道、スタジアムなど、施設利用者からの収入が期待できる事業。 |
これらのスキームは、対象施設の条件(新設か既存か)、業務範囲(整備から行うのか運営だけか)、資金調達、契約期間、官民の役割分担のバランスなどを踏まえて選定されるべきだと言えます。
また、PPP・PFIの整備・運営事業では、スキームによって資金調達や所有権の帰属、収支モデルや責任範囲が大きく異なります。そこで、下表3に、代表的な4スキーム(DBO、BTO、BOT、BT+コンセッション)の違いを一覧で整理しています。
表3|整備・運営事業のスキームの詳細分類
| 項目 | DBO | BTO | BOT | BT + コンセッション |
| 根拠法令・制度 | 地方自治法 | PFI法 | PFI法 | PFI法 |
| 施設所有者 | 行政 | 行政 | 民間(のち行政に転移) | 行政 |
| 建設費負担 | 行政 | 民間 | 民間 | 民間 |
| 運営期間 | 短〜中期(5年程度) | 短〜長期(10〜30年) | 中〜長期(20〜30年) | 短〜長期(10〜30年) |
| 収支モデル | 指定管理費 | サービス購入料 | 利用者購入 | 利用者購入 |
| 行政からの収入 | 指定管理費 | サービス購入料 | なし | なし |
| 利用者からの収入 | なし(行政が徴収) | あり | あり | あり |
| 行政への支払い | なし | なし | 固定賃貸 | 運営権対価 |
| 民間の裁量性 | 低 | 中 | 高 | 高 |
| 民間のリスク | 低 | 中〜高 | 高 | 高 |
上表3が示すように、DBOは行政が資金を負担するため調達コストを抑えられますが、運営収入は行政からの指定管理費やサービス購入料が中心となり、利用者料金による収入は限定的です。
また、BTOは建設資金を民間が負担し、行政はサービス購入料で返済するため、初期投資を抑えつつ公共所有を維持できます。BOTは民間が施設を所有・運営して利用者料金収入で資金を回収するため、収入変動や利用需要のリスクを民間が負担します。
BT+コンセッションは民間が運営権を持ち、利用者料金収入に加えて行政から運営権対価を支払うケースもあり、長期的な運営裁量が高い反面、収益確保への責任も大きくなります。
4. どのスキームを選ぶべきか
PPP・PFIスキームの選定は、制度の理解に加えて、「公共施設の性質」「財源状況」「官民の役割設計」といった多面的な観点からの検討する必要があります。
各スキームの特性を踏まえつつ、「どのような条件下で、どのスキームを選ぶべきか」代表的な実務判断軸と適した方式例について下表3にて整理します。
表3|整備・運営事業のスキーム検討ポイント
| 条件/目的判断軸 | 具体的な検討ポイントとスキーム例 |
| 財政負担(初期費用)を抑えたい | 行政が初期投資を抑えたい場合、建設費を民間が調達するBTOやBOT、BT+コンセッションが候補となります。行政はサービス購入料や運営権対価を支払うことで財政負担を平準化できます。 |
| 行政が施設を所有し続けたい | 施設を公共資産として残したい場合は、行政が所有権を持つDBOやBTOを選ぶのが適しています。公共施設としての性格を維持しつつ民間運営を導入できます。 |
| 民間の運営ノウハウを活用したい | サービスの質向上や効率化を重視する場合は、長期運営と自由度が高いBOTやBT+コンセッションが有効です。民間は利用者料金収入を得るため、創意工夫や投資意欲が高まります。 |
| 官がサービス品質をしっかり管理したい | 行政がサービス品質をしっかり管理したい場合は、公共所有下で契約によって運営をコントロールしやすいDBOやBTOが向いています。 |
ただし、これはあくまで代表的なパターンに基づく整理であり、実際のプロジェクトでは、公共性を保ちながら民間の収益性を確保する必要があるだけでなく、敷地条件、工期(段階的整備の可否)、プロジェクト体制など、条件や目的がより複雑に絡み合ってきます。
その為、制度の知識やフレームワークだけではなく、「何のためにこの事業を行うのか」「このプロジェクトで本当に大切にすべき価値は何か」「何を優先すべきか」を明確にしたうえで、各スキームの特徴を理解し、目的に応じて複数の制度を組み合わせる柔軟なスキーム設計を目指すことが求められます。
5. まとめ
実際の案件では、敷地条件や工期、利用者負担の考え方、民間事業者の参加意欲など複数の要素が絡み合います。「何を優先すべきか」「公共としてどの価値を守りたいか」を明確にしたうえで、複数の制度を組み合わせる柔軟な発想国土交通省が推進するスモールコンセッションのように、指定管理や賃貸借など他の手法と組み合わせる事例も増えています。
ここまで解説したように、PPP/PFIは運営関連事業と整備・運営事業でそれぞれ適したスキームがあり、官民が対等なパートナーとして課題を共有しながら最適解を見つけることが重要です。
行政が全ての役割を担う時代は終わりつつあり、民間の創意工夫を活かした共創型のプロジェクトが第二の波として拡大しています。制度の枠組みや法改正を踏まえ、地域の現状や将来像に合ったスキームを選択することが、持続可能なまちづくりへの近道と言えるでしょう。