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第4回:PPP/PFIがうまくいかないときに起きていること

2025/11/21

制度が整備され、一定の導入実績も積み上がってきたPPP/PFIですが、実際にはうまくいかない、あるいは途中で頓挫するプロジェクトも少なくありません。第4回では、こうした“つまずき”の実情に焦点を当て、その背景にある構造的な要因と、公的ガイドラインが示す改善の方向性を整理します。

1.     入札不調・応募ゼロ──制度を動かす前の壁

全国の自治体で「PFI方式による整備・運営を想定していたが入札不調で中止」「事業者から一件も応募がなかった(応募ゼロ)」という事例は珍しくありません。背景には以下のような課題が挙げられます。

・事業スケールが小さすぎる(採算が取れない)

・リスクの過度な民間転嫁

・行政が確保している予算が少なすぎる

・収益予測に必要な情報不足

・業務範囲の不明瞭さ

・スケジュール感や事業構造への理解の差

一見すると制度面での整備が十分に見えても、これらの要因が複合し、民間から見れば「投資リスクが読めず回収計画が立てにくい」と評価されがちな点があります。

内閣府のガイドラインは、入札公告時点の市場実勢を反映した設計や、公表資料の充実、官民対話の活用を通じて参加障壁を下げるべきだと説いています。

加えて、入札不調・不落の一因は価格算定のタイムラグにあります。予定価格の算出日を可能な限り後ろ倒しし、公告時点の実勢を反映するという方針は、2024年6月の改定で明確化されました。

2.     契約後に表面化する課題

契約締結後でも、資材高騰・人件費上昇によるコスト超過、意思決定プロセスの齟齬、契約条項の不備(不測事態対応の不足)などが表面化し、途中で民間事業者が撤退したり、再交渉に至ったりする場合があります。

特に、事業開始後に発生する急激なコスト超過や追加要求、不透明な変更は、民間側の経営リスクを急激に高め、撤退に繋がることがあります。

その為、PFIの長期契約特性を踏まえた「サービス対価の改定」や契約変更手続の規定化は、実務指針の要諦です。実際に、内閣府は物価・金利等の変動に応じ一定頻度でサービス対価を改定可能にする設計を求めています。

3.     中でも大きな要因となる物価高騰

近年の建設資材、エネルギー、人件費の高騰は、予定価格と実勢価格の乖離を拡大させ、全国で入札不調・不落の多発や、受注後の採算悪化や大幅な損失を招いています。

その為、政府は「価格転嫁」「労務費適正化」の対策を強く進めています。例えば、内閣府のアクションプラン(令和7年改定)では、物価上昇への継続的・的確な対応を政策柱の一つに据えています。また、国土交通省は公共工事設計労務単価を2025年3月適用で13年連続引上げとしており、コスト環境の変化を公的に示しています。

しかしながら、依然として実需と予定価格の差が拡大している状況です。

4.    課題に向けた対策

一般社団法人 日本建設業連合会ではこうした課題に対して、下記のような対策を明示しています。一般社団法人 日本建設業連合会等が指摘してきた論点は、公的ガイドラインの改定内容とも整合します。ここでは、自治体・事業者双方が実務で採るべき「核」を、内閣府・国交省の公式指針を軸に再整理します。

予定価格の適正設定

入札公告日近くに予定価格を再設定し、物価高を反映すべき。早期設定の場合でも、公告時点の価格に調整する。2024年6月改定のガイドラインでも「実勢価格を適切に反映すべき」と明記。

サービス対価の改定

物価変動に応じて契約後も価格改定ができるよう、公告日を改定基準日に固定し、公表すべき。すでに締結済みの契約にも遡及適用を求める。

物価指数は「建設物価建築費指数」を基本とし、他の指数(国交省のデフレーター等)は使わないよう統一。例外的に市場実勢に乏しい場合は、合理的見積で補う。

スライド条項(価格調整条項)は公共契約約款標準に基づき、国・自治体がばらつきなく全適用すべき。

入札方式の柔軟化

大規模・複雑なPFI案件には、総合評価型競争入札ではなく、公募型プロポーザル方式を基本とし、発注者が適切に選定できるよう指導すべき 。

従来課題改善案
予定価格の設定
入札公告のかなり前の段階で建設費などの予定価格を設定し、その価格をもとにPFI事業を発注してきた。
  サービス対価の契約
一度契約した金額(サービス購入料)は原則として固定。契約後の物価上昇等による金額の見直しは基本的に行われない。  
入札方式
ほとんどのPFI事業では「総合評価型競争入札」が採用され、金額と技術評価で受注者が決まる仕組み。  
物価・人件費の高騰による損失
建設資材、エネルギー、人件費などの急騰により、予定価格と実勢価格が大きく乖離。
→ 多くの案件で入札不調・不落が発生、受注しても採算が取れず赤字になるケースが頻出。  
価格改定の仕組みが機能しない
契約後の物価上昇に対応する仕組みが整備されておらず、受注者側が一方的にリスクを負う状況。
→結果的に、事業の継続や維持管理に支障が出る恐れが高まっている。  
入札方式が柔軟でない
複雑な事業にも一律で総合評価型入札が使われ、民間事業者の提案力が十分に活かされない場面がある。  
予定価格の再設定
入札公告日直前の価格で予定価格を設定し、実勢価格を反映できるようにする。
→予定価格の「見直し」ではなく「再設定」を基本とする。  
契約後の価格改定ルールの明確化
契約時点での価格基準を公表し、物価変動に応じたサービス対価の見直しを契約条項に明記。
→建設物価指数等を用いて公正・透明に改定できる仕組みを導入。  
スライド条項の統一適用
価格調整(スライド)条項を国・自治体すべての契約に共通して適用。
→発注者ごとのバラツキを防止し、受注者の予見可能性を高める。  
プロポーザル方式の積極採用
事業の複雑さに応じて、プロポーザル方式(提案型選定)を導入しやすくする。
→技術提案や創意工夫を反映でき、質の高いPFI事業の形成につながる。  

5.    つまずきの先にあるもの

これまで様々な視点でPPP・PFIを紐解いてきましたが、PPP・PFIがうまくいかない背景には、制度そのものよりも、それをどう使いこなすかに課題が潜んでいる可能性もあります。

物価高騰・予算不足・リスク配分の偏りといった障壁を乗り越えるには、発注者・受注者・地域社会が互いの前提を共有し、変化に対応できる柔軟な枠組みを設計することが不可欠です。その鍵となる視点は以下の3つが考えられます。

・適正な価格設定と価格調整メカニズム: 実勢価格を反映した予定価格の再設定、契約後のスライド条項の徹底。

・発注プロセスの柔軟化:プロポーザル方式や対話型手法を活用し、民間の創意工夫を最大限引き出す仕組み。

・ガバナンスと合意形成: 官民の目的共有、住民合意を丁寧に積み上げ、“公共性と採算性”の両立を図る。

6.     最後に

PPP・PFIは長期契約だからこそ、柔軟なプロジェクトマネジメントや、品質を守るディレクション、そして外部・内部環境の変化に追随するレジリエンスが不可欠です。

制度や契約の整備に加え、そこには「関係者間のコミュニケーション」が重要な役割を担います。プロジェクトの価値を最大化するために、その姿勢を忘れず、関係者が良好なコミュニケーションをとれる環境づくりも必要不可欠で、実は一番難しいことなのかもしれません。

今回紹介した最新の公的ガイドラインが示す「価格の実勢反映」「対価改定」「スライド条項」「対話・公表の徹底」といった実務原則を、個々の案件に合わせて運用し切れるかといった「制度の使いこなし」こそが、つまずきを越え、事業価値の最大化に向けた重要なポイントであるといえます。

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